ホンダ・フィットオーバーヒートとサブタンク

ホンダ・フィット オーバーヒートとサブタンク

走行距離が20万キロを超えたホンダ・フィットのオーバーヒート故障事例です。

 

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車両スペック

  • ホンダ・フィット
  • 年式:平成21年12月
  • 型式:DBA-GE6
  • エンジン型式:L13A
  • 走行距離:230.000km

目次

アイドリング時に水温計点滅

真夏日にエンジンを掛けたまま駐車場に止めて10分すると、運転席内の水温インジケータランプが赤色で点滅しはじめた。すぐにエンジンを停止し、しばらく放置してエンジンを冷やした後、再度エンジンを始動させ、エアコンをOFFにして車の窓を全て開けて、ヒーターを全開にした状態で走行可能な状態で帰宅した。
エンジンのオーバーヒートが疑われるときにヒーターを全開にするのは、エンジンの熱を少しでも外部へと逃がすためで、窓を全て開けた方がいいのも車の内部にヒーターから放出された熱を外気へと逃す目的とただ単に真夏日で暑いからという理由でもある。
帰宅して完全にエンジンを冷ました状態にして、再びエンジンを掛けてアイドリング状態でOBD診断専用のiphoneアプリを使って水温をモニターする。10分近くのアイドリングで、水温は100℃を超えて水温インジケータランプが赤色に点滅し始めた。
ラジエータの電動ファンは回転するのだが、冷却が間に合わない。エアコンをONにしてラジエータファンを回転させた状態で走行すると、走行時は水温90℃近くをウロウロし、信号待ちなどで停車すると、あっという間に100℃を超えて120℃位まで上がる。そこでエンジンを停止して、再始動させると、カリカリというノッキング音が確認できた。これはもう完全にオーバーヒートだな…。

 

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ネット検索しながら原因を考える
帰宅して現車確認とネット検索しながら原因を考える。現車確認と点検ではラジエータサブタンクの水量とラジエータの電動ファンとコンデンサファンは異常なしと判断、エンジン本体をくまなく点検するも水漏れの跡はないし、ホース類の劣化やウォーターポンプの異音も確認できない。ネット検索していると、サーモスタットが開かないことが怪しいなどという情報だけれど、サーモスタットが開かなくてオーバーヒートを起こしたという故障事例を聞いたことがあるような、無い様な…。そもそもサーモスタットは故障したら開きっぱなしになるのではないか??
水温センサそのものの異常かもしれないと言う情報もあったけど、それだったらエンジンに他の症状が出てきているはずなので、これも異常は無いと判断した。

意外な原因

翌朝もう一度冷却水の量を確認しようとエンジンルームを点検する。エンジンが冷えていてラジエータキャップが機能しているなら、ラジエータサブタンクの水位は前日走行直後にラジエータサブタンクで確認した時の水位より低くなっているはずだ。
しかし、水位は減少しておらず、前日確認したままで全く減少していなかった。ということはラジエータキャップが原因かもしれないと、キャップを取り外してみる。キャップを点検しなきゃなと思いつつ、ふとラジエーターに目をやると…。
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あれ、冷却水が入ってない…。 おもむろにラジエータサブタンクのキャップを開けてみる。

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あ、ホースが付いていない。どこだ??

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サブタンクの中を覗いてみる…。なんと、サブタンクの冷却水の中に沈んでいた!!

サブタンクの中の冷却水の色は元々青色なんだけど、なんせ20万キロ近くも冷却水を交換していないせいか、サブタンクの中の冷却水はほぼ真っ黒で、サブタンクキャップに付いていなければならないはずの黒いホースが外れて冷却水の中に沈んで完全に見えなくなってしまっていた。
ラジエータキャップの機能は、ラジエータからエンジン全体に通っているエンジン冷却水に圧力を掛けて、冷却水の沸点を大気圧下の冷却水の沸点(水と同じ)を100℃以上に上げて水温を安定させてオーバーヒートを防ぐ役割があるほかに、走行してエンジンが高温になるにつれ、熱により膨張して体積が増加した冷却水を増加しただけサブタンクへと送り、エンジンを停止してエンジンが冷えることで生じる負圧により、そのサブタンクへ送った冷却水の量だけラジエータ内に戻して冷却水の量を一定に保つという重要な役割がある。

 

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つまり今回のオーバーヒートの原因は、ラジエータサブタンクのキャップに付いている冷却水のホースが抜け落ちることで、エンジンを停止させて冷やしたときに、ラジエータに負圧で吸い上げられて戻るはずの冷却水が戻らずに、エンジン本体内の冷却水の量が少しずつ減少して行った結果、冷却水不足でオーバーヒートが起こったと考えられる。

修理と対策

ラジエータサブタンクの冷却水の中に沈んだホースを先の長いラジオペンチとマイナスドライバーを使って取り出した。沈んでいたホースはサブタンクに取り付けられていたと思われる部分が劣化により膨れあがっており、差し込むことができずに簡単に外れた。

 

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なので、ホースをひっくり返して先端の膨れていない方をキャップに差し込んで固定した。サイズの合うホースバンドで軽く締め上げるのもいいと思う。

 

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この後、ラジエーターに水道水を補充していったのだけど、ジョッキにして2リットル近くも吞んでしまいました。本当に危ない状況でした。
その後、エンジンを掛けヒーターを全開にして冷却水のエア抜きを行ったあと、試運転で水温をモニターしながらオーバーヒートしないことと停車してサブタンクの冷却水量が増加していることをを確認し、帰宅して駐車場に止めて、翌朝エンジンが冷えた状態でサブタンクの水量が減っていることを確認して修理完了とした。
今回のオーバーヒートは、走行距離が20万km以上でありながら、日頃の点検からのちょっとした不具合に気が付かなかったことが原因のケアレスミスだった。自動車のエンジンにおいては、当たり前に付いている部品は当たり前に付いていなければならない。漫然と点検するのではなく、基本的な点検をしっかりと定期的に行う事が、今回のような細かいミスから重大な故障や事故を防ぐのだということを痛感させられました。
また、インターネット上の故障修理事例もそのまま鵜呑みにするのは大変に危険なので、よく考えてあくまでも目に前にある車両がどのような状態にあるか、しっかりと見極める目を養うことも重要なのだということも、改めて実感させられました。
OBD2の簡易的なモニタリング方法
スマートフォンアプリからOBD2コネクタに接続できるアダプタにBluetoothやWifiを使って通信することで簡易的にエンジン回転数や水温などの車両情報をモニターできます。他にも様々なアプリやアダプタがあるし、なによりコンパクトで使いやすく、コストパフォーマンスにも優れているので、ポケットに入れておく感覚で使ってみてはどうでしょうか。

 

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OBD Auto Doctor car scanner(iphone)の画面

 

アプリの一例(iphone, android)
OBD Auto Doctor car scanner(iphone) : https://apps.apple.com/jp/app/obd-auto-doctor-car-scanner/id908897183
専用アダプタはBluetooth仕様であれば、上記のアプリに適合するものがいくつか販売されています。自分が使っているアダプタは現在製造中止になっているようなので、ネット検索の上専用のアプリに適合するアダプタをご利用下さい。

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