カーエアコンの基礎を見直す

カーエアコンが冷える原理

カーエアコン修理経験不足の整備士?

エアコンは本来エアーコンディショナーなので、一年中使用しても別に構わないのであるが、エアコンが冷えないといったトラブルで入庫してくるケースは大抵夏場である。毎年全国的に天候不順のせいか、猛暑日や湿気の多い曇りの日が極端に続いている。そのためか、エアコンのトラブルを訴えてくるユーザーは多い。しかしながら、エアコンの修理となると自動車電装業に外注しているケースが未だに少なくないようだ。これは修理の失敗や煩雑さ等の理由から外注しているのかもしれないが、意外にもエアコンの専門は整備士ではなく、自動車電装業の専門であると思われている。そしてまたエアコン修理の経験が少ない整備士は未だに多いようだ。そんな馬鹿なと思うならば聞いてみたらいい。半数くらいの整備士はまともに答えられないから。

というのも、自動車整備士3級レベルのテキストではあまり詳しく解説されていないし、自分の場合2級整備士の講習でも、あまり詳しい講習はなされなかった。勤務する会社の方針次第ではエアコン修理はすべて外注するということであれば、そこで勤務する整備士にはほとんどエアコンを修理する機会が無いということになる。また、エアコン修理のための機材や設備などにもかなりの設備投資をしなければならないので、採算を合わせるということと、上述の通りほとんどのエアコン修理が夏期に集中してしまうことを考えれば、経験が不足する整備士が出てきても不思議ではないということである。

そこでここでは、エアコンとその修理に関する知識不足を補ってもらうべく、基本的なところを押さえながら簡単な故障事例を紹介する。

上図はカーエアコンの冷凍サイクルを示すもので、整備士のテキスト等には必ず出てくるものである。それぞれの部品がどのような仕組みであるかは各自研究して頂くとして、その役割を簡単に説明していこう。




コンプレッサ

エアコン修理と聞いてまず思いされるのはコンプレッサーだろう。文字通り圧縮する機械だが、ここでは、エアコン冷媒を圧縮して気体から液体にする。

気体と液体の性質

基本知識として、通常、気体は圧縮されると液体に変化する。一定の温度で一定の圧力を加えると冷媒は気体から液体に変化する。未開封のエアコン冷媒の缶を振ると液体の状態であることが分かるが、これは一定の圧力で缶に充填されているためで、できるだけ涼しいところに保管しておく必要がある。40℃以下で保管するように指定してあるはずである。

また、気圧の低い山頂などでお湯を沸かそうとすると、100℃以下で沸騰することをご存じだろう。例えば、富士山頂の気圧は約480mmHgで、87℃くらいで沸騰する。

参考までに、大気圧におけるエアコン冷媒の沸点は、R12(CFC)が約-29.8℃、R134a(HCFC)が-26.2℃で、R134の沸点が3.6℃高く、これが旧フロンに比べ新フロンは効きが悪いといわれる理由だが、自分としてはあまり実感できていない。

コンプレッサの圧縮能力

コンプレッサの圧縮能力が低下すると、気体を液体にさせるための準備能力が著しく下がるので、当然冷えが悪くなる。このとき、マニホールドゲージが示す数値の目安としては、高圧側は低く(7~10kg/cm2)、低圧側は高くなる(4~6kg/cm2)。また、コンプレッサ内部で漏れが生じると、エアコンのスイッチを切るとすぐに高圧側と低圧側の圧力が同じくらいになってしまう。

異音トラブル

ユーザーからの訴えの多くに、異音トラブルがある。一事例としては、Vベルトが原因のものがあった。車検整備などでベルト類を交換するために取り外すと、通常は円形になっているはずが、ベルトの一部だけ膨らみ変形していて、このわずかな変形が「ビーン」とも「ウィーン」とも言えないような音の発生源となっていた。また、エアコン冷媒を入れすぎてシステムライン内にエアが混入してゴトゴト音が出たり、コンプレッサオイルが漏れ出して、クラッチ部分に付着し「ウィーン、カシャッ」というような音が出るというモノなど、異音の出方によってその解消方法もいろいろ考える必要が出てくる。

コンデンサとクーリングファン

ラジエータのようなモノがコンデンサで、その手前左の筒状のモノがリキッドタンク

クーリングファン

 

 

 

 

 

 

 

 

冷媒はコンプレッサで加圧された気体の状態でコンデンサに送られ、個々で冷却されて液体に変化する。冷媒はコンプレッサで圧縮される際に熱を発する。この熱い冷媒を少しでも早く冷却して液化することが、コンデンサーとクーリングファンの最大の役目である。液化するときに熱を奪うので、エアコンを入れているクルマに近づくと非常に熱いのはこのためである。

余談だが、古いクルマでは、エアコンを入れるとオーバーヒート気味になるクルマがあるが、これはラジエータの冷却能力との関連があり、この場合にはラジエータ本体を改造して冷却能力を向上させる必要がある。しかし、すべてのクルマがそれでヒートが改善されるものではない。旧式の車を扱う場合にはそのエアコンシステム自体の温度を下げるために、何らかの方法をとる必要があるようである。

コンデンサー・クーリングファンのトラブル

トラブルとしては、クーリングファンの回転数低下やコンデンサ本体のつまり等による冷媒の冷却不足に起因する冷えの悪さなどが考えられる。電動ファンがあるのに、走行すれば冷えるが渋滞すると全く冷えないというようなときが、これに当たるだろう。もっとも、この症状はコンプレッサの能力が低下してきたときにも言えるのだが…。

この状態の時のマニホールドゲージの指針は、高圧側が高く(21〜23kg/cm2)、低圧側も少し高め(約2.5kg/cm2)を指すだろう。このような場合には、コンデンサに霧吹きなどで水を掛けてやって、マニホールドゲージが正常値を示し、エアコンの吹き出し口温度が低下する(冷える)ようならば、このような場合に原因があるとみていいだろう。

コンデンサが詰まるのは、コンプレッサによる汚損や、コンプレッサなどの機械的なトラブルから誘発されたクズなどによるモノが多いようだ。コンデンサを点検してつまりが発見されたならば、もう一つ突っ込んで、詰まりの原因そのものを追求する必要がある。フィンにゴミなどが付着して冷却能力が低下している場合もあるので、適時に清掃することも勧めたい。また、クーリングファンの回転数低下に関する点検には、ストロボランプを使用する方法もある。

レシーバ(リキッドタンク)

コンデンサで液状にされた冷媒をレシーブするためのもので、エキスパンションバルブに向けて必要十分な冷媒を適宜供給できるようにするために、一次的に冷媒をためておく役割をするものである。その内部には、エアコンシステムの大敵である水分を除去するための乾燥剤や、ゴミを取り除くためのストレイナーが入っている。いわゆるフィルターのような役割をするため定期的に交換する必要がある。

よくあるケースだが、走り始めはエアコンの効きはいいが、しばらく乗っていると効きが悪くなったり、エアコンをOFFにしてしばらくするとまた正常に作動するというようなトラブルは、エアコンシステムの水分の混入によって誘発されていることが考えられる。この場合はレシーバーを交換する必要が出てくる。いすれにしても、エアコンシステムにとって水分は大敵である。



エキスパンションバルブ

エキスパンションバルブを図示しているのであるが、図の斜線部部には冷媒が混入されていて、このダイヤフラム上部の冷媒の膨張、伸縮により、エキスパンションバルブの冷媒入り口から入ってくる冷媒の量を変化させている。感熱筒は、エパボレータ出口(低圧側)のパイプの温度を感知して斜線部分の冷媒の温度を変化させることによって、冷媒の圧力を変化させる。これにより、高圧側からの冷媒流入量を変化させる。

エパボレータ出口の温度が低いと、斜線部分の冷媒の圧力は低下し、冷媒入り口からの流入圧力にスプリングの力が加わりボールを押し上げるために、冷媒の流入量は少なくなる。逆に、エパボレータ出口の温度が高くなると、反対の動作になり、冷媒の流入量は多くなる。このようにして、エパボレータへの冷媒注入量を調整している

高圧に圧縮された冷媒が、このエキスパンションバルブで急激に膨張(エキスパンド)されてエパボレータ内に放出されると、冷媒にかけられていた圧力が一気に低下するために、液体状の冷媒は気化していくことになる。

エパボレータ

エキスパンションバルブから放出された冷媒が、ここで完全に気化(エパボレート)される。液体が気体に変化するためには気化熱と呼ばれる熱量が必要で、エパボレータはこの熱量をその周囲の空気から奪うので冷却される。(例:消毒用アルコールを皮膚に塗るとひんやりと感じる原理と同じ)「液体が気体に変わるときは周囲の熱を吸収し、気体が液体に変わるときには熱を放出する」ということである。そうして周囲から熱を奪い冷却されたエパボレータの背後よりブロアモーターで風を送れば、吹き出し口から冷たい空気が出るといった具合である。

冷媒の充填量は適量にする必要があり、多すぎても少なすぎてもいけない。冷媒の充填量が多すぎるとエパボレータ内で完全に気化されずに液体の状態で残るので、冷却能力が低下する。少なすぎても十分に気化されずに冷却ができない。

エアコンの除湿作用については、例えば冷蔵庫から冷えたビールを出してテーブルに置いておくと周りに水滴が付いてくるのと同じで、冷やされたエパボレータのに空気中の水分が結露してクーリングユニットに溜まり、ドレンホースから車外に放出される。

エパボレータは、エアコンシステムの構成上、どうしてもホコリやゴミなどで汚れてしまう。湿気くさくなるし、健康面からも病原菌の巣窟になるといわれている。このため、クーリングユニット内のエアコンクリーナーは定期的に交換する必要がある。また、エアコンクリーナーがない旧式の車では、クリーナーで隙間から清掃するか、クーリングユニットを分解してエパボレータを取り外して清掃・消毒する必要がある。

 

以上がコンプレッサからエパボレータまで、冷凍サイクル構成部品の主な役割である。





 

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