オルタネーターとダイナモ

バッテリーの充電装置であるオルタネータとダイナモ

自動車に使用されるバッテリー(12v, 24v)は直流電源であるので、このバッテリーに充電するとなると、やはり直流電源が必要になってくる。通常、発電機は、内部の回転機構により、交流電源を発生させてさらに、整流器で直流電源に変換してからバッテリーに充電する。1950年代までは、当時の自動車の用途に適合するような適当な整流装置はなかったので、発電機もそのまま直流の発電機が使用されていた。そしてこれが「ダイナモ」と呼ばれていた。

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1950年代末になると安価で小型高性能な整流器が開発されるようになり、直流発電機に変わって交流発電機にこの整流器が備わって交流を直流に変換する発電機が使用されるようになった。これを「オルタネーター」と呼ぶ。

交流発電機の採用によって、低速回転での大幅な発電能力(充電能力)の向上を手に入れるとともに、長年の課題であった整流子(コンミュテータ)とブラシのメインテナンスから解放されるようになった。

また、この交流発電機への転換も非常に速いスピードで行われ、日本の自動車でも1960年代の後半にはほぼ終了していた。

直流発電機(ダイナモ)と交流発電機(オルタネーター)の違い

どちらも発電の原理は、磁界の中を導線が移動すると(逆に磁界の方が移動してもよい)導線に起電力が発生するという電磁誘導作用を利用していることに変わりはない。

すなわち、導線内を通る磁束を変化させると、導線には磁束の変化を妨げる方向に電流を流そうとする起電力が発生するというものである。この電流の流れる方向と、磁界と導線を動かす方向との関係は「フレミング右手の法則」で説明できる。

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図1:フレミング右手の法則

直流発電機(ダイナモ)の場合

下の図2において、コイル(導線の輪)を右方向に回転させたとすると、フレミング右手の法則で示されるように、図の矢印の方向に起電力が発生することになる。このまま回転を続けて、コイルの面が磁力線の方向と垂直となる点を過ぎると、磁力線に対する導線の動く方向が反対方向(下向きから上向きに)となるので、電流の流れる方向も反対方向となるはずである。

ところが、整流子があるために、コイルの面が垂直になったところで(図の整流子片とはコイル面が垂直になった位置での切り込みのことであるので、整流子の切り込み部分である整流子片と接触しているブラシとの接続はなくなる)いったん電流が遮断され、ついで整流子片に接触しているブラシとの接続が切り替わるので。ブラシから負荷へ流れる電流の方向はそのまま変化しない仕組みになる。すなわち、直流となる。これが直流発電の原理である。

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直流発電の作動原理

仮に整流子片がないそのままブラシと接触し続ける整流子の場合には、コイル面が垂直の位置になった時点で電流の方向が反対方向となり、直流ではなく交流となる。この問題を解決するために、整流子に半回転(180°)の位置で、切り込みが入れてあるのである。

この整流子とブラシの構造は不完全であり、メンテナンスによっては様々なトラブルの原因となっていた。充電電圧に達しない低速回転では、バッテリーからの逆流を防ぐためにカットアウトリレーが必要であるし、低速回転での充電能力が低いということと、電機子(アーマチュア)のコイルが高速回転を苦手とすることなどの理由から、小型で信頼性の高いシリコンダイオードによる整流器が開発されると、交流発電機(オルタネーター)に取って代わられてしまった。

交流発電機の場合

発電の原理そのものは直流発電機と変わりはないが、発生した起電力の取り出し方が異なる。下の図3は交流発電機の原理を示しているが、コイルの両端が、整流子ではなくスリップリングに接続されている。その場合、スリップリングとブラシの接続状態は変化しないので、コイルが回転してコイルに発生する起電力の方向も変化することになる。これが交流発電の原理である。

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図3:交流発電機の作動原理(アーマチュア回転型)

ただし、実際のオルタネーター(交流発電機)では、電力を発生するコイルはステータ側に巻かれていて回転せず、磁石側が回転するようになっている。(図4参照)そこで、これをフィールド回転型とか、界磁回転型と呼ぶことがある。

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図4:交流発電機の作動原理(フィールド回転型)

回転磁石(ローター)は、励磁用バッテリーとローターコイルによって励磁される。(励磁:磁束を発生させる)したがって、スリップリングに流れる電流は出力電流ではなく励磁用の小電流ですむので、スリップリングとブラシのさらなる長寿命化を図ることが出来る。

これは、オルタネーターの特徴の一つである。

より長寿命が要求される大型車では、ブラシレスが用いられることもある。

なお、励磁用のバッテリーは実際に自動車に搭載されているバッテリーを使い、オルタネータが発電を開始すると、出力の一部が励磁用に使用されることになる。

同じ交流発電機でも、バイクの多くは回転磁石に永久磁石を使用し、構造が簡素化されている。また、回転磁石では発電用コイルの周囲を回転する外転型で、フライホイールマスの一部となっている。

オルタネーターの特徴

オルタネーターの特徴を次にまとめる

  • 構造上、高速回転が可能なことから小型軽量化できる。(直流発電機のアーマチュアコイルは遠心力に耐えて高速回転させることが難しいが、オルタネータのローターコイルはローターコア(ボール)の中心部に直接巻き付けるような形で径も小さく、高速回転することが可能である)したがってアイドル時の回転数を高く設定できるので、エンジンが低速回転時での発電出力向上につながる。
  • ローターコイル(フィールドコイル)がバッテリーで励磁される他励式なので、アイドリングでも発電することが出来る。(直流発電機のフィールドコイルを流れる電流は出力に左右されるので、低速回転での出力は極めて小さい)
  • コミュテーターではなくスリップリングを用い、そのスリップリングを流れる電流も出力電流ではなくローターコイルの励磁電流で小電流のため、ブラシの寿命が長く、メンテナンスが容易である。また、ブラシレスにすることも可能である。
発電出力特性
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図5:発電出力特性

図5より、発電出力特性の一例を挙げると、低速回転での出力が向上したとはいえ、アイドル時は定格出力のおよそ10〜20%程度しか出力していない。したがって、アイドル時のように、エンジンの回転数が低いときは発電できる電力が必要な電力量を下回るので、不足する分はバッテリーが補うことになる。そして回転数が高くなると出力に余裕が出来るので、その余った電力でバッテリーを充電するということになる。

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図6:単相交流と三相交流

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図7:単相コイルと三相コイル

上の図4においては、発生する交流は単相交流となってしまうが(図6参照)、実際のオルタネーターは三相交流である。ステーター側のコイルを1個増やして3個にすることで三相交流が得られるようになる(図7参照)

オルタネーターの構造

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図8:IC式オルタネーター

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図9:ローター

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図10:ローターの構造

ローターとステーター

ローターは図9のようであるが、構造は図10のように。ローターコイル(フィールドコイル)を2個のローターコアで挟み込むような形になっている。したがってスプリットリングからローターコイルに励磁電流が流れると、2個のローターコアはN極とS極に励磁されるので、ステーターコアに向かい合う面にはN極とS極が交互に並ぶことになる。図4や図7のローターは、実際のローターから1組のN極とS極を取り出したものと考えることが出来る。

ブラシレス型の場合には、オルタネーターハウジングに固定されたローターコイルの周りを、非接触の状態でローターコイルが回転することになる。モーターは通常永久磁石の中を銅線を巻いたコイルが回転する構造になっているが、この構造を逆にして永久磁石側を回転させる構造にすれば、ブラシを作らなくてすむ。(図11参照)

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図11:ブラシレス型のローター

このようにして、ローターは単純な構造で多極化することが出来、高速回転に耐える強度と高い効率を得ることが出来る。

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図12:ステーター

起電力を発生させる側のステーターは図12のようになっている。三相交流を得るために3つのコイルを、ローターコアの極数に合わせて巻いた物であると考えると理解しやすい。つまり、ローターコアの極数の分だけ小型のオルタネーターを直列に接続したものであると考えると図13のようなイメージになる。

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図13:ステーターコイルのつなぎ方

オルタネーターが発電するということは、一種の抵抗であるコイルに電流が流れることになるので当然熱が発生する。したがってコイルの絶縁やダイオードが損傷することを防ぐために、冷却用のファンが取り付けられている。

なお、オルタネーターは通常クランクシャフトからファンベルトで駆動されているが、回転速度はクランクシャフトのおよそ2倍ぐらいで回転させている。

三相交流の整流(直流電流に整流する)

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図14:オルタネーターの発生電圧

ローターが回転すると、ステーターの3つのコイルに位相がずれた起電力が発生する。(図14参照)これを三相交流と呼ぶ。

しかし、このままの起電力の状態ではバッテリーの充電など自動車の電装部品には使うことが出来ないので、直流に整流しなければならない。整流器として用いるダイオードとの接続状態は図15のようになっていて、図14の三相交流を整流することによって、図16のような直流が得られる。

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図15:三相全波整流回路の作動1

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図15:三相全波整流回路の作動2

なお、図16のA点の状態は図15の③の状態であるが、このときはコイルcに発生するマイナス(-)電圧がコイルbのマイナス(-)電圧より大きいので、電流はコイルaから負荷を通ってコイルcへと流れる。そして整流後の電圧は、コイルaとコイルcに発生する電圧の差、つまり、コイルaの電圧に白矢印(<==>)で示したコイルcの電圧を上乗せした物に等しくなる。(実際にはaとcの電圧の差なので計算式を立てると「A点でのコイルaの電圧差 – (-A点でのコイルcの電圧差) = A点でのコイルaの電圧差 + A点でのコイルcの電圧差」となる)

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図16:整流後の電圧

この整流回路では、コイルにどちらの向きの電圧が発生しても一定方向に流れる直流として利用することが出来るが、この整流の仕方を全波整流回路と呼ぶ。これに対して交流の片側の電圧(一方向)しか取り出すことが出来ない整流方法を半波整流と呼ぶが、この場合には整流することによって、整流後の電力が半減してしまい、発生する電力を有効に活用することが出来ない。

全波整流では3つのコイルに流れる電流が順に大きさと流れる方向を変えていくが、負荷側では常に一定の方向に電流が流れるようになっている。

なお、ダイオードは一方向にしか電流を流さないので、オルタネーターの発電電圧が低い場合にバッテリーから電気が逆流するのを防止することが出来る。つまり、ダイナモ(直流発電機)の場合に必要だった逆流防止用のカットアウトリレーが不要になる。

ボルテージレギュレーターの働き

電磁誘導作用による誘導起電力はコイルを通る磁束が変化する速さに比例するので、オルタネーターの発生電圧は、回転速度と時速の大きさ、すなわちローターの磁力(ローターコイルの励磁電流)とに比例することになる。

したがって、回転速度が高うなるほど発生電圧が高くなるので、自動車のエンジンのように回転速度が大きく変動する原動機で駆動される場合には、電圧が安定せずあまりよくない。そこで回転速度が変動しても、発生電圧を常に一定に保とうとしているのがボルテージレギュレーターの役目である。

ボルテージレギュレーターの作動原理は、オルタネーターの発生電圧が励磁電流に比例することに注目し、ローターコイルに流れる励磁電流を制御することによって発生電圧を一定に調整しようというものである。

ボルテージレギュレーターには接点式とIC式があるが、現在は小型で信頼性が高く、オルタネーターに内蔵可能なIC式が使われている。IC式は、接点式で故障の原因となりやすかった接点がなく、無接点であるからである。

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IC式ボルテージレギュレーター

接点式ボルテージレギュレーター

接点式の場合は、オルタネーターの回転数が上がり発生電圧が高くなるとレギュレーターコイルの電磁力も高くなるので、引きつけ力が発生してポイントが開く。その後、フィールドコイルに直列に抵抗が接続されるので、フィールドコイルの電流が低下し、発生電圧が低下する。(図17参照)

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図17:接点式ボルテージレギュレーター

IC式ボルテージレギュレーター

IC式の場合には、発生電圧が高くなるとツェナダイオードが導通状態となる。このとき、トランジスターTr1がON、トランジスターTr2がOFFとなるので、フィールドコイルの電流が低下し、発生電圧が低下する。(図18参照)

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図18:IC式ボルテージレギュレーター

発生電圧が降下すると、ツェナダイオードが非導通状態となり、トランジスターTr1がOFF、トランジスターTr2がONとなるので、フィールドコイルの電流が増加、発生電圧が増大するという繰り返しとなる。

実際の充電系統の回路図は図19のようになる。

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図19:充電系統回路図

現在の充電装置

オルタネーターなど現在の充電装置はほぼ完成の域に達しているように思えるが、最近はセンサーや電子制御の発達に伴い、さらなる充電効率や自動車の燃費向上などを目標にしたきめの細かい制御が行われている。

例えば、走行状態に応じて充電制御を行うというものである。エンジンの出力を必要とする加速や登坂時には発生電圧を下げてあまり充電せず、アクセル(スロットルバルブ)を閉じる減速時には発生電圧を上げて確実に充電しようというものである。考え方としては、減速時には車の持つ運動エネルギーを回収してバッテリー充電に使うというもので、どちらかというと、ハイブリッド車の技術に近いものがあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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