ドラムブレーキの基本

ドラムブレーキの基本

ドラムブレーキは、トラックなどの他に軽自動車や小型自動車のリヤブレーキにも採用されている。ドラムブレーキが開発されたのは1904年のロールスロイスが最初であると言われていることから、自動車が誕生してまもなくのことで、ディスクブレーキと比べると倍の歴史がある。1920年頃にセルフサーボ(自己倍力)作用があることが発見されたので、ツーリーディングシステム(ブレーキシューを2枚)にすることで、少ない踏力で強い制動力が得られることが判明した。以来、ドラムブレーキは長足の進歩を遂げることとなった。

 

ドラムブレーキの性能と作動

Drum type hydraulic brake body

図1:ドラム式油圧ブレーキ本体

ドラムブレーキはパーキングブレーキとして動作させることが出来るので、リヤブレーキドラム内部やトラックのプロペラシャフトに直結しているセンターブレーキ、ディスクブレーキのローター内側のドラム部分にパーキングブレーキ機構が組み込まれている。

しかし、冷却性に弱点があり、高速での安定した制動力を発揮させることに問題がある。そのため、現在では乗用車のフロントブレーキはほぼ100%ディスクブレーキに取って代わられた。

Brake shoe surface pressure distribution

図2:ブレーキシューの面圧分布

代表的な構造としては図1のようであるが、アンカーピンとホイールシリンダーの組み合わせによっていくつかの種類に分かれる。それはドラムブレーキの基本となるリーディング・トレーリングシュー型において、ブレーキシューの面圧分布を調べると図2のようになり、リーディングシューはセルフサーボ作用(自己倍力作用)によってドラムに強く押しつけられるので、トレーディングシューより大きな制動力を発揮させることが出来る。このとき、リーディングシューの仕事はトレーディングシューの3倍程度ほどになる。そこで、「どちらのシューもリーディングシューの制動作用と同じに出来ないか?」という設計段階での考え方が発想されてツーリーディングシュー型が開発された。

Two reading type

図3:ツーリーディング型

ツーリーディングシュー型(図3)は、前進しているときの制動力は非常に優れているのだが、後退時はどちらのシューもトレーディングシューとなってしまうので、制動力は大幅に低下してしまう。

Duo servo type

図4:デュオサーボ型

これではあまり意味がないので、2つのシューの下端をアンカーピンで固定するのはやめて、可動させることが出来るシューアジャスターに置き換えたものが図4のデュオサーボ型である。このような機構にすることで、前進でも後進でもトレーディングシューがシューアジャスターに押されて開くことになるので、どちらのブレーキシューもトレーディングシューとして働くことができる。

しかしながら、現在では、軽自動車や小型自動車に採用されているドラムブレーキは、図1のような最初に考案された方式のリーディング・ドレーディング型が主流である。なぜかというと、これらのドラムブレーキは主にリアブレーキとしての採用がほとんどであり、フロントエンジン・フロント駆動(FF)の自動車においては基本的にリアの車軸にかかる荷重がフロントに比べ小さいため大きな制動力を必要としないということ、自動車の走行時において、フロントより先にリヤの制動力が高すぎて後輪が先にロックして運転制御不能になってしまうことを防ぐという目的があるからである。

Dual leading shoe type

図5:デュアル・ツーリーディングシュー型

トラックなどの大型車両では、前進・後進ともに後輪にかかる負荷が大きいので、両側にピストンを持つホイールシリンダーを2つのシューの両端に装着するデュアル・ツーリーディングシュー型のドラムブレーキが採用されている。

ブレーキ・ドラムの種類
Types of brake drum

図6:ブレーキ・ドラムの種類

ブレーキ・ドラムは一般に鋳鉄製が用いられるが、軽量化と冷却性の向上を狙い、アルミ合金の本体に鋳鉄製の内張りを組み合わせた、アルミフィンドラムが使われることもある。(図6)

ホイールシリンダー

ホイールシリンダーは、マスターシリンダーからのブレーキ油圧を受けてシューにドラムを押しつける働きをするもので、ピストンの数によって2ピストン型と単ピストン型がある。(図7、図8)

2-piston wheel cylinder

図7:2ピストン型ホイールシリンダー

Single piston type wheel cylinder

図8:単ピストン型ホイールシリンダー

自動調整装置(オートアジャスター)

ライニングが摩耗すると、シューとドラムの間の隙間が大きくなり、プレー機ペダルの踏み込みが深くなる。なので、一定期間ごとに調整を行う必要が出てくる。この作業を機械的に自動化して、シューとドラムの隙間を常に適切な状態に保つようにしたものが自動調整装置である。

自動調整装置には、フットブレーキを作用させたときに調整が行われるものと、パーキングブレーキを使用したときに行われるものとがある。

Automatic adjustment device

図9:自動調整装置

図9において、パーキングブレーキのレバーを引くと、ブレーキシューレバーが矢印の方向へ引かれるので、アジャストレバーがピンを支点にして図10(1)の矢印のように上に動き、シューアジャスターの歯を乗り越える。

Adjustment lever operation

図10:アジャストレバーの作動

ブレーキレバーを戻すと、テンションスプリングのバネ力によってアジャストレバーが図10(2)のように下がり、シューアジャスターを回転させるので、シューストラットを外側に広げる。よって隙間は規定値以内に調整される。

隙間が規定値内にあるときには、ブレーキレバーを引いてもアジャストレバーの動く量は少なく、シューアジャスターの歯を乗り越えることがないので、調整作用は行われることはない。

車検や点検などで、ドラムブレーキを分解整備する際には、このシューアジャスターを双方向に回転させることにより、シューとドラム間の隙間を調整することで、フットブレーキの踏みしろやパーキングブレーキの引きしろが調整され、ブレーキのきき具合を決定する。

ブレーキ調整の基本

ドラム式ブレーキの調整方法は、メカニックによってまちまちではあるが、基本的にシューとドラムの隙間をドラム本体が回転するかしないかのギリギリの状態まで縮めた状態から少しだけ(アジャスターであれば3〜5コマくらい)戻して、ドラムを回転させたときに、シューとのあたりによる抵抗感が多少感じられる位が適切であるが、車の状態(前後輪の荷重のかかり具合など)やユーザーの要望(パーキングレバーの引きしろの強弱など)、車検時のライン検査基準などで若干変わってくる。乗用車にしろ、トラックなどの大型車にしろ、このブレーキ調整は、分解整備の際にも非常に神経を尖らせなければならない重要な整備項目の1つである。事故につながらないよう、基本を十分に体得した上で作業を行うことを薦めたいと思う。

 

 

 

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