ハイエース・ベルトの滑り音

90年式トヨタ・ハイエース 型式:U-LH102V エンジン型式:2L トランスミッション:FR5MT 走行距離:130,000km

「ベルトが滑る音がするので修理して欲しい。」との依頼で入庫。入庫の時の点検で、エンジンの発電機であるオルタネータを駆動するベルトの張り具合から、少しおかしい事に気がついた。なぜなら、ベルトは交換されたばかりの状態であったからである。

ユーザーのお話では、ベルトの滑り音が気になるのでガソリンスタンドに給油によったときに相談すると”ベルトが滑っているので張り具合を調整しましょう”ということでちょうせいしてもら調整してもらったところ、いくら調整しても音が消えなかったため”ベルトの寿命でしょう”ということで、新品のベルトに交換してもらったということ。

ところが新品に交換してもベルトの滑り音は止まらず、ガソリンスタンドのメカニックも困り果てて、整備工場に相談して下さいと言われたとのこと。

 

このベルトを張りすぎると、オルタネーターのプーリーベアリング破損の原因になる。しかし、ベルトを貼った状態で音が出る。そのほかにこの異音の出所として考えられるのは、エンジン本体のオイルポンプの目詰まりで、エンジンを吹かすとそれに応じて音が発生する事が考えられるが、どうも今回はそれではなさそうである。

そこで、そのオルタネータ駆動ベルトを取り外した状態で、エンジンを駆動して様子を見ると、異音ははしなくなった。ということは、エンジン本体の原因があれば音は止まらないということで、原因はエンジン本体ではなく、確実にベルト自体かベルトを介して回るプーリー滑り音ということになる。





通常ベルトが新品の状態で、適正な張り具合で交換した場合で音が出るということは、ベルト自体ではなく、プーリーが原因と言うことである。なので、プーリー単体を点検していくと、なんとクランクプーリーがエンジンの作動中にクランクシャフトから発生する「ねじれ」を吸収するためのトーショナルダンパーとプーリー外周の接着が剥がれていた。

 

早速新品のクランクプーリーを取り寄せて交換し、ベルトを適正な張り具合で正常な状態に取り付けてからエンジン始動すると、ベルトの滑り音は解消され、スムーズなエンジン音となった。これで整備完了とした。

 

今回は幸いオルタネータなどのプーリーベアリング破損などの過失は防ぐことが出来たが、その可能性は大いにあり、まずはじめにユーザー様から相談してもらえなかった我々自動車整備工場の側がしっかりと反省しなければならないと感じる一件となった。

 

オルタネータやエアコンコンプレッサー、パワステポンプなどエンジン本体の補機と呼ばれる装置を作動させているベルトやプーリー類はエンジン本体の中心であるクランクシャフトについている「クランクプーリー」が駆動することで回転する。なのでベルトを張りすぎると各補機のプーリーベアリングが破損して回転不能に陥ったり、今回のようにクランクシャフトプーリー本体のトーショナルダンパーが破損する場合も十分に考えられるし、この事例は他メーカーの車両でもよくある故障事例である。




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