マニュアルエアコンとオートエアコン
カーエアコンは、基本的には、図1のように暖房装置、冷房装置の機能部品が用いられており、それぞれも熱交換器(ヒーターコア、エパボレータ)が同一のケース内に収められていて、吹き出し温度が暖房及び冷房だけでなく、中間温度にもコントロールできるようになっている。
したがって、温度が低く湿度が高いような場合には、エパボレータで温度を下げて空気中の水分を凝縮させて除湿し、ヒーターコアで温めれば冷房感なしの快適な環境を作り出すことができる。
目次
- カーエアコンの制御方式による分類
- カーエアコンの熱交換器の配置方法による分類
- カーエアコンの基本構造と機能
- エアコンサイクルを構成する機能部品
- マニュアルエアコン
- オートエアコン
- オートエアコン吹き出し温度制御システム
- オートエアコン風量制御システム
カーエアコンの制御方式による分類
- マニュアルエアコン
エアコンの設定温度は、暖房または冷房のどちらの機能を強めるかをそのときの温度条件によって選択する。
マニュアルエアコンは、この冷暖房機能の強め方を温度設定レバーによって調節し、吹き出し温度を調整する。
- オートエアコン
オートエアコンは、車室内の温度を希望温度に設定すると、車室の内外の温度変化や日射の影響をコントロールユニットによって自動補正し、車室内温度を常に設定温度に保つように制御する。
カーエアコンの熱交換器の配置方法による分類
- エアミックス方式
図2のように、エパボレータとヒーターコアとの間にエアミックスダンパがあり、このダンパの開き具合によってエパボレータで冷やされた空気がヒーターコア側に流れる量と、吹き出し口の方に流れる量を制御し、両方の空気をエアミックスチャンバで混合して温度調整を行っている。
- リヒート方式
図3のように、エパボレータを通った冷風がすべてヒーターコアに流れるようになっていて、ヒーターコアに流れる温水の量をウォータバルブによって制御し、冷風をどれだけ温めるかという方法で温度調整を行っている。
カーエアコンの基本構造と機能
以下に示す図はエアコンの冷凍サイクルを構成する代表的な機能部品の位置と役割、カーエアコンが冷媒をどのように循環させて冷却しているかを示している。
エアコンサイクルを構成する機能部品
コンプレッサ
コンプレッサ(斜板式)は図5のように斜板の回転により、ピストンを左右に動かして冷媒の吸入と圧縮・送出を行うもので、3対(6気筒)又は5対(10気筒)のピストンが、斜板によってシャフトに対して斜めにセットされている。
この方式のコンプレッサでは、シャフトが回転すると、図6のように斜板によってピストンがシャフトと同一方向の往復運動を行う。
1対のピストンの両側にはそれぞれにシリンダが配置されており、片側が圧縮行程にあるときは、反対側が吸入行程という具合に、気筒数によって各行程サイクルが決められている。
コンデンサ
コンデンサは、コンプレッサから圧送された高温・高圧のガス状冷媒を冷却して液状冷媒にするためのものである。チューブとフィンで構成され、冷却水のラジエータのようにアッパータンクとロアータンクは設けられていない。また、図7のようにラジエータの前面に取り付けられ、コンデンサーファンと走行による前面冷却風がフィンを通過することで発生する冷却作用により、チューブを通過する高温・高圧のガス状冷媒を液状冷媒にすることを促している。(図4参照=リンク)
コンデンサの冷却には、電動ファン(コンデンサファン)が組み付けられているが、電動ファンの回転速度は、冷凍サイクル内の圧力や冷却水温(ラジエータ内の水温)によって、2~3段階に制御されている。
レーシーバ・サイトグラス
レシーバは、図8のような構造をしており、コンデンサで液化した冷媒を、冷房負荷に応じてエパボレータに供給できるように、一時的に蓄えるようにしたもので、冷媒中のガスと液体を分離する役割をする。
また、レシーバー内部には、冷凍サイクル内のゴミや水分を除去するために、ストレーナと乾燥剤が封入されている。
冷凍サイクル中に水分が含まれていると、各機能部品を腐食させたり、エキスパンションバルブの細孔で凍結が起こり、冷媒の流れを阻害することがある。
サイトグラスは、冷凍サイクル中を流れている冷媒の状態を観察する「のぞき窓」であり、一般的に、この窓から気泡が見えるときは、冷媒不足であり、気泡が見えないは、冷媒量が適正量であることを示している。(あくまで目安である。)
サイトグラスは、図のようにレシーバの上部に取り付けられているが、レシーバの架装状態から、上部で使用できないときは、配管の途中に取り付けられた単独のものが使用されている。
エキスパンションバルブ・エパボレータ
エキスパンションバルブは、図9のようなもので、次に示す2つの働きをする。
- レシーバを通ってきた高温・高圧の液状冷媒を、非常に小さな孔から噴射させることにより、急激に膨張させて、低温・霧状の冷媒にした状態で、エパボレータへ注入する。
- エパボレータ内における冷媒の気化状態に応じて、冷媒量を調節する。
エパボレータの能力を十分に発揮するためには、液状の冷媒が周囲の熱を奪って、常に、エパボレータ出口で蒸発が完了するような状態に保たなければならない。
そのためには、車室内温度(冷房負荷)の変動及びコンプレッサ回転速度の変動に応じて冷媒量を自動的に調節している。
冷媒量を調節する基本的な仕組みは、エキスパンションバルブのダイヤフラム室とそれに直結されたニードルバルブの開閉によって行われている。
図10において、ダイヤフラム室のA室には冷媒ガスが封入されている。
このA室の圧力は、エパボレータ出口付近の冷媒温度が高いときは大きく、低いときは小さくなる仕組みになっている。
図10(1)のボックス型では、感温棒によりA室のガスに温度が伝わってガス圧を変化させ、図10(2)の従来型では、感熱筒内のガスによって直接A室のガス圧が変化する。
一方で、B室には、エパボレータ出口付近からエパボレータ蒸発圧力が加わっている。
基本的な作動を説明すると、図10において、一定量の冷媒が流れているとき、ダイヤフラムはA、B室の圧力とスプリングの力によってニードルバルブを一定の開度に保っている。しかし、冷房負荷(室内温度など)が変動すると、A室の圧力が変化し、ニードルバルブを左右に移動させて冷媒量を調節してエパボレータへの冷媒の供給を制御している。
マニュアルエアコン
図11において、ブロワの回転によって流れる空気は、エパボレータを流れるときに熱を奪われ、冷温になってラジエータ(ヒーターコア)の方へと流れる。
エパボレータとヒーターコアとの間にエアミックスダンパがあり、その開き角度は温度調節レバーによって調整できるようになっている。
温度を最大冷房の位置にセットすると、エアミックスダンパは(A)の位置、すなわち、ヒーターコアへの通路を閉じることになり、すべての冷風は温められることなく、エアミックスチャンバを通って、吹き出し口から室内に流れて冷房を行う。
次に、温度を最大冷房の位置にセットすれば、エアミックスダンパは(B)の位置になり、冷風がすべてヒーターコアを通るので、ここで温められ温風となって室内に流れて暖房を行う。
もし、温度設定レバーを中間位置にセットすると、エアミックスダンパは(C)の位置になり、冷風の一部は、そのままエアミックスチャンバへ、一部はヒーターコアに流れて温風となってエアミックスチャンバへと流れ、ここで高低2つの温度を持った空気が混合されて吹き出し口から室内に流れて室内温度を調整する。
このように、エアミックス方式は、エアミックスダンパの操作により温風と冷風の量を制御して室内温度の調整を行っている。
なお、吹き出し口の選択は、吹き出し口切り替えダンパのレバーを操作することによって行う。
オートエアコン
図12はECU制御によるオートエアコンのコントロール系統図である。
温度設定レバーによって設定温度の信号をコントロールユニットに送り、また、室内温度、日射量、外気温度を各センサで検出し、その信号をコントロールユニットに入力している。
コントロールユニットは、入力された情報からオートエアコンの作動、すなわち、「エアミックスダンパの開度、風量切り替え、吸い込み口及び吹き出し口の切り替え、コンプレッサの制御」などを決定して、室温を制御している。
オートエアコン吹き出し温度制御システム
内気温センサー
図13に示す内気温センサは、車室内の空気を取り入れ、その温度をサーミスタによって検出し、抵抗値に置き換えてコントロールユニットへ送るもので、空気の取り入れには、図13(1)のようにアスピレータを用いてヒーターユニットの風の流れを利用するものと、図13(2)のような専用のファンモーターで取り入れるものなどがある。
外気温センサー
図14に示す外気温センサは、サーミスタによって外気温度を抵抗値に置き換えるものであり、このセンサは、例えば、外部を走るクルマなどの排気ガスの影響など、急激な温度変化に敏感に応答しないように、外部を樹脂で成形してある。
日射センサー
図15に示す日射センサは、日射量によって抵抗値が変化するフォトダイオードを使用しており、一般的には、日射の影響を受けやすいインストルメントパネル上部に取り付けられている。
温度設定抵抗
図16に示す温度設定抵抗は、温度設定レバーに連結され、ユーザーが設定した温度を抵抗値としてコントロールユニットへ入力する。
吹き出し温度制御
図17は吹き出し温度制御のブロックダイヤグラムである。
温度設定レバーによる設定抵抗(希望温度)及び内気温、外気温、日射、エパボレータの各センサからの信号が、エアミックスダンパ制御回路に入力される。
制御回路で必要吹き出し温度を算出して、サーボ駆動回路を作動させ、サーボモーターによって、図18のエアミックスダンパの開度を制御する。また、サーボモーターの動きをポテンショメータによって検知し、再び制御回路に入力して作動の補正を行っている。
オートエアコン風量制御システム
オート制御
図19はオート制御の系統図である。外気温度、設定温度、車室内温度などの条件によってコントロールユニットが吹き出し温度に見合った風量を決定し、パワートランジスタによってブロワモーターを無段階に変速させている。
ウォームアップ制御
図20は、ウォームアップ制御のブロワ風量と、冷却水温の関係の一例を示したものである。
冷却水温が低く、吹き出し口がFOOTモード(足元)のとき、足下からの冷風吹き出しによる不快感をなくすための制御で、水温センサによって冷却水温を検出し、ブロワ風量制御回路に信号を送っている。
一般には、冷却水温が約30℃~40℃以下ではブロワモータOFFで、50℃〜60℃ではLoで制御し、水温が上昇した後に自動制御するようになっている。
ブロワ遅動風量制御
図21は、ブロワ遅動風量制御のブロワ風量と、経過時間の関係の一例を示したものである。
吹き出し口がFACE(顔面)モードで、コンプレッサをONにした直後、温風吹き出しによる顔面への不快感をなくすための制御である。
キースイッチON後でブロワ自動制御時、エアコンスイッチがONであれば、約8秒間はブロワモーターがOFFし、コンプレッサのみONにしてエパボレータを冷却する。約8秒後に、ブロワモーターがLoで起動して冷却された風が吹き出し、その後は、遅動タイマによって、図21のように制御される。
ブロワ起動制御
ブロワモータ起動後、約2秒間はLoで制御し、起動電流からパワートランジスタを保護している。
オートエアコン吹き出し口制御
吹き出し口の切り替えは、エアミックス用のサーボモータおよびコントロールユニットからの信号で、吹き出し口切り替え用サーボモーターを作動させ、このサーボモーターに連動した吹き出し口切り替えダンパを作動させる。
図22は,吹き出し口の切り替えの一例を示したもので、自動制御される吹き出し口の温度によって吹き出し口を「FACE」→「BI-LEVEL」→「FOOT」の間で自動的に切り替える。吹き出し温度が低い場合には「FACE」、中間の場合には「BI-LEVEL」に、高い場合には「FOOT」に切り替えられる。
吹き出し温度や風量などそれぞれの制御項目は、自動制御しかできないのではなく、エアコンコントロールパネルの制御スイッチによって、それぞれのサーボモーターを制御し、任意にマニュアル制御することができる。