ニッサンラルゴ:タイミングベルトについて

平成7年式 日産ラルゴ 型式:Y-VW30 エンジン型式:CD20

タイミングベルト切れ

走行中にエンストしその後、再始動できなくなった。整備工場にて、オイルフィーラーキャップを取り外してクランキングしてみるとカムシャフトが回転しないことから、タイミングベルト切れと判断した。

エンジンが止まったときの走行距離は93,000kmで、前回車検時の走行距離は88,000km。この距離とユーザーの使用方法からから推して察するに、次回車検までには10万kmに達することは出来ない。当然のことながらそれまでにタイミングベルトの交換歴はない。

あまりに早い交換を勧めて”過剰整備”を指摘されても具合が悪いので、一応ユーザーには「タイミングベルトの交換は次回車検時か10万kmまでにやりましょう。」と了解を得ていましたが、今回切れてしまった。

 

タイミングベルトが切れた場合の修理の程度

このような場合、日産ではどのような対処をするのか、近くのディーラーに問い合わせてみると、「そのエンジンでタイミングベルトが切れた場合はエンジンを載せ替えている。」との回答。その理由は「シリンダヘッドはバルブからカムシャフトまで交換しなければならないし、ヘタをするとクランクシャフトまでも曲がってしまうから」だそうだ。

タイミングベルト切れによるバルブクラッシュが原因でクランクシャフトが曲がる?改めてそう言われると経験が無い。なので修理するとなると、ディーラーのとおりエンジン載せ替えになる。だからといって、状態の分からない中古のエンジンは使えません。

 

タイミングベルトを交換をお客様に納得してもらうということについて

リスクを考えると、リビルドエンジンが妥当なところだろうと考えていると、ふと思いついたのだが、”エンジンオイルならば〇〇kmまたは〇〇ヶ月で交換して下さいと、距離と期間の交換目安が表示してあるのに、タイミングベルトは10万kmで交換と距離は書いてあっても期間や年数は示されていないな”ということだ。

タイミングベルトは果たして消耗品なのだろうか??

この車の場合、5年以上たってしまえば、10万kmで切れてもクレーム扱いにはならない。

例えば、これが三菱のデリカ・4D56みたいなタイミングベルトが切れてもロッカーアームが折れるだけで、タイミングベルトと折れたロッカーアームを交換すれば修理できる。というのなら10万km走行前に切れても、年数表示がされなくても、なんとなく納得もでき、ユーザーにも説明しやすいが、今回のようにメーカーの指定する「規定距離」に到達する前にタイミングベルトが切れているのに、いきなり「エンジン分解修理です」とか「エンジン載せ替えです」なんて当然のように言われると、何だか釈然としないし、ユーザーも納得してくれないのではないだろうか??

「そんなことは、前回の車検で安全策をとらなかったあなたが悪い」と言われるかもしれないが、当整備工場も以前は到達距離より以前(約2万km前後)に交換を行っていた。

しかし、「タイミングベルトを規定距離より早めに交換しないとエンジンが壊れますよ」という説明を整備士からユーザーに伝えるの”脅し”に聞こえると冗談まがいに言われたことがあり、それが結局”過剰整備”に繋がるという判断をしてしまった私は、それ以来、メーカーの「規定距離」に到達していない場合はタイミングベルトの交換を勧めることは辞めていたのだ。

エンジン本体の分解修理

今回のトラブルについては、エンジン載せ替え、分解修理、新車乗り換え、のいずれかを行う事になったので、概算見積もりを出すため、また、先に述べた壊れているかもしれないクランクシャフトに興味津々なので分解することにした。

ヘッドカバーを開けると、油圧式ラッシュアジャスターが割れている、ということは、タペットを交換すればエンジンは掛かるか?と思いきや、よく見ると一番シリンダの排気バルブのタペットが沈んでいる。やはりバルブが曲がっているようだ。

シリンダヘッドを外し、クランクを回してピストンのガタを調べたが、ここには異常が無く、クランクもスムーズに回り、引っかかる様子もなかったことから、コンロッドやメタルも大丈夫だろう。

タペットを外して、カムシャフトの曲がりを点検したが、異常は無く使えるようだ。しかし、曲がった排気バルブをはずそうとするとバルブステムが途中で折れてしまい、その折れたステムとバルブが干渉して脱けてこない。ハンマーで叩くと、ステムごと脱けてきた。

以上の分解により損傷部位がハッキリしたので、ヘッド交換の見積もりを出すと30万円くらいになってしまった。このことをユーザーに説明すると「新車に乗り換える」とのこと。

この修理、日産車に詳しい知人に聞くと「そのパターンの修理をする場合は、バルブステムガイド挿入部のシリンダヘッドに微妙なクラックが入っていることがあるので、十分に注意するように」トのことだった。

今回の修理はユーザー様は新車に乗り換えてしまったので、関係なくなりましたが…。




 

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