平成1993年式 日産スカイライン 型式:E-BNR32 エンジン型式:RB26DETT型 走行距離:148,000km
不具合の連鎖
ユーザーからパワー不足・加速不良・始動困難という不具合での修理の依頼があったので、車両を引き取りにいって現車を確認する。マフラーとエアクリーナーは車検対応の車外品に交換されていて、外付けメーターのブースト計と電子式ブーストアップ装置が装着されていた。
- アイドリングの不具合
引き取り時はエンジンが始動していて暖機状態であったため、始動困難の現象は確認できなかった。アイドリングのばらつきはなかったが、メーター読みで基準より低めの750rpmでアイドリング負圧は-40kpaだった。
- ブースト圧の不具合
加速すると、息つきはないもののレスポンスが悪く、60km/hに達するのもやっとで、5速にいれると平坦路でも速度が落ちていった。不思議なのは、過給圧が3000rpmまでにフルブースト(125kPa)になってしまうことだった。ブーストアップ装置をいじってみたが、ドライバビリティと過給圧に変化はなかった。整備工場に到着してエンジンフードを開けると、ターボチャージャは真っ赤に加熱されていた。
- ファストアイドルが効かない
車両を一日放置してエンジンを冷やし、基本点検後にエンジンを始動してみたところ、15秒ほどのクランキングで始動したがファストアイドルが効かない。(スローが上がらない)暖機後にエアコンをONにしたりランプを点灯しても、アイドルアップしないので、AACバルブ、エアレギュレータ関係の不具合が予想される。また、点火プラグはすすけていたものの、最近交換したようだった。
吸気系統とクランク角センサ
吸気系統の不具合と対応
ダイアグノーシス・コードは正常で各配線系もOKあった。つぎにAACバルブを外したところ、カーボンが詰まっていたので分解清掃した。エアレギュレータを点検するためにサージタンクとスロットルボデー、吸気マニホールドを取り外した。エアレギュレータは汚れもなく、ヒートコイルの抵抗は正常値。気温変化でシャッター開度が変化したので、バイメタルは正常と判断した。
- 吸気マニホールドガスケット
分解時には気がつかなかったが、吸気マニホールドのガスケットが破損して吹き抜けた跡を発見した(写真)。各部品をを清掃して、新品のガスケットを装着した。これで始動困難の問題が解決された。
- ターボチャージャーのホース
始動困難の問題は解決したが、今度は「シューッ」とエアを吸い込むような音がした。点検すると、ターボチャージャのアクチュエータホースがボロボロになっていた。おそらくターボチャージャーの異常加熱のためであろう。アクチュエータホースを交換して、そのほかの配管を点検したが異常は見られなかった。車両火災にならないでよかった…。
クランク角センサの不具合
エンジンを暖機して、アイドリング=950rpm、アイドリング負圧=-50kPa、点火時期=上死点前20度を確認して、試乗に出た。はじめは快調だったが、引き取り時ほどではないものの、突然加速不良になり、またしばらくすると快調になる現象が繰り返し出た。点火時期を点検すると上死点前5度で、クランク角センサを限度まで動かしても上死点前15度にしかならず、その状態でセンサに軽くショックを与えると上死点前15〜25度を行ったり来たりした。
クランク角センサが上死点前の角度を上手く調整し切れていないことから、クランク角センサの不具合であると判断して交換した。その後各部を再度点検調整した後、試乗を繰り返して完治したことを確認し、修理の仕上げしてエンジンオイルとフィルタを交換して納車した。
今回のトラブルは、不具合の症状も多様であることから、複数あった故障箇所の特定も難しく、日頃の点検技量が試される事例であった。