平成8年式 日産スカイライン 型式:E-HR33 エンジン型式:RB25DE
オートエアコンのブロアモータが最大風量で回転しなくなった
通常、ブロアモータはそのモーターにかかる電圧を変化させて風量を変化させている。クルマのエアコンは大きく2つのタイプがあり、マニュアルエアコンとオートエアコンがある。マニュアルエアコンの場合は風量をレジスタを用いて段階的に制御させている。また、オートエアコンの場合にはパワートランジスタを用いて風量を無段階に制御している。
マニュアルエアコン・オートエアコンどちらの場合でも、最大風量の場合はレジスタまたはパワートランジスタを通らずにバッテリ電圧が直接供給される仕組みになっているので、そのままブロアモーターが回転するかどうかでモーターと回路の良否判定ができる。
この場合最大風量にしてもブロアモータは回転しないので、電源回路とモーター自体の点検が必要になる。そのため回路図に示す回路のオートアンプの19番端子をアースするとモータが勢いよく回転することから、ここまでの回路は問題ないと判断した。それから、ブロアモーターの最大風量を制御する「Hi」リレーを探したが見当たらないので、メーカーに問い合わせてみた。
メーカー発行の新型解説書によると、従来のようなパワートランジスタではなく「MOS電界効果トランジスタ」といわれるものが使用されていることがわかった。(MOS=メタル・オキサイド・セミコンダクタ)
MOS電界効果トランジスタ
MOS電界効果トランジスタは、従来のものに比べて内部抵抗による電歩こうかが少ないため、これまでのような「Hi」リレーを必要としないらしい。(下記回路図参照)
ブロアモータのケースに設けられているファンコントロールアンプのNO2とNO3端子に電圧計をセットしてブロアスイッチを操作すると2Vから10Vの間で変化した。以上の点検結果から、ファンコントロールアンプの不良であるということが確認できた。
温度ヒューズの溶断
ファンコントロールアンプを新しいものと交換すると、ブロアモーターは正常に作動するようになった。そこで、故障したほうのファンコントロールアンプを分解したところ、温度ヒューズが溶断していた。これはマニュアルエアコンの風量制御回路のレジスタにも用いられているものであるが、これが溶断するにはそれなりの理由が存在する。
例えば、部屋ドライヤが古くなると熱風が出なくなるのであるが、これは吸入口や内部に付着した髪の毛やほこりによって通風が悪くなり、温度が上昇しすぎて溶断してしまうためである。
これと同じように、クルマのエアコンフィルタやエパボレータが目詰まりすると、前述のヘヤドライヤと同じ原理で風量が低下することで温度ヒューズが溶断してしまうのだ。
温度ヒューズが溶断しているからと言って、ハンダ付けして修理してはいけない。何故なら、温度ヒューズは約180℃で溶けるが、通常のハンダは220℃前後が融解点なので、加熱して車両火災になりかねないからである。
同じオートエアコンを例にとっても、今回のようにその制御方式が微妙に変化しているということを知らないと、これまでと同じような判断方法は通用しなくなってしまう。自動車技術は日々進化しており、それに対応するためにも日々の学習は欠かせないと思った。