ディーゼルエンジン予熱装置

ディーゼルエンジン予熱装置

図1:電熱式インテークエアヒータ

図1:電熱式インテークエアヒータ

ディーゼルエンジンは、空気を圧縮したときに発生する熱を利用して、燃料に着火させる自己着火の原理を用いているが、寒冷時の始動などでは、圧縮による温度上昇が不十分なため、燃料に着火しないことがある。このような場合に、エンジンの始動を容易にするために、圧縮による温度上昇を補助する装置として予熱装置を用いている。

この予熱装置には、吸入空気通路の途中にエアヒータを設けて吸入空気をあらかじめ暖めるものや、燃焼室内にグロープラグを設けて燃焼室内の温度を上昇させる方式のものなどがある。

一般にエアヒータは中型車や大型車に用いられ、グロープラグは小型車に用いられることが多い。

目次

電熱式インテークエアヒータ式予熱装置

図2:電熱式エアヒータ回路図

図2:電熱式エアヒータ回路図

電熱式インテークエアヒータは、図1-2のように吸気の通路途中に設けたエアヒータに通電することで赤熱させ、それにより吸入空気を暖める仕組みになっている。

図2は電熱式エアヒータの回路図で、エアヒータがECU、ヒーターリレー、インジケータランプ、水温センサ、エアヒータ本体などから構成されていることがわかる。

水温センサがあることから、このインテークエアヒータの特徴は、ECUにより始動時のエンジン冷却水温度に応じて、自動的に予熱時間を演算制御して吸入空気を適正温度まで暖める機能があることだ。

図2-1:電熱式エアヒータ回路図

図2-1:電熱式エアヒータ回路図

上図から、その作動を説明する。

  1. キースイッチをONにすると、ECUは水温センサからの入力信号により、規定の予熱を必要とする冷却水温度(以下、予熱水温)の範囲にあるかを判断する。
  2. 予熱水温にある場合は、ヒーターリレーに通電し、ヒーターリレーヲONにさせると同時に、インジケータランプを点灯させる。これにより、バッテリからの電流がエアヒータに流れて予熱を開始する。
  3. ECUは、予熱水温に見合った時間だけエアヒータに継続的に予熱を行い、規定の通電時間に達すると、ヒーターリレーへの通電を停止させ、ヒーターリレーをOFFにする。
  4. ヒーターリレーがOFFになると、インジケータランプも消灯する。
  5. インジケータランプ消灯後、キースイッチをSTARTにすると、スタータによってエンジンが始動する。
  6. エアヒータで暖められた空気がシリンダ内へ吸入されることで、冷間時においても適正な圧縮熱が得られ、エンジン始動が容易になる。

なお、電熱式インテークエアヒータにおいては、このほかに、エンジン始動後もエンジンを円滑に回転させるために引き続き予熱を行う機構を設けているものもある。

グロープラグ式予熱装置

グロープラグ式予熱装置は、ディーゼルエンジンにおいて、過流室式エンジン及び一部の直接噴射式エンジンに用いられている。

予熱時間(グロープラグへの通電時間)によって分類すると、通常型と急速型に分けられる。

グロープラグ式予熱装置のシステムは、ECU、グロープラグ、グロープラグリレー、インジケータランプ、水温センサなどから構成されている。

図3:グロープラグ温度上昇特性

図3:グロープラグ温度上昇特性

図3より、予熱装置の温度上昇特性は通常型と急速型に分けられ、グロープラグの形式のうち、自己温度制御型グロープラグは急速型に分類される。

自己温度制御型グロープラグ予熱装置は急速型に分類されるが、これについては後述する。

通常型グロープラグ式予熱装置

図4:グロープラグ取付位置

図4:グロープラグ取付位置

通常型グロープラグ式予熱装置は、図4のようにシリンダヘッドの燃焼室に取り付けられたグロープラグと、グロープラグの赤熱状態を確認するためのグロープラグパイロット及びこれらに流れる電流を制御するグロープラグリレーから構成されている。

通常型グロープラグ
図5:通常型グロープラグ

図5:通常型グロープラグ

通常型グロープラグは、図5のように、保護金属管の中にヒートコイルを組み込んだものである。

ヒートコイルと金属管の隙間には、耐熱性の絶縁粉末が充填されており、絶縁とヒートコイルを保持する役割を果たしている。

グロープラグパイロット

グロープラグパイロットは、グロープラグの赤熱状態を視覚的に確認するためのインジケータランプである。通常、グロープラグリレーによって制御され、グロープラグが適切に赤熱している間は点灯し、予熱が完了すると消灯する仕組みになっている。

図6:グロープラグパイロット

図6:グロープラグパイロット

図6のグロープラグパイロットは、ヒートコイルとこれを支える端子及び保護カバーで構成されていて、電流によってグロープラグと共に赤熱することで、予熱状態(グローランプの状態)を示す。

このインジケータランプ形式は、実はかなり古いもので、旧車の運転席内に取り付けられているていて、運転者に予熱状態を知らせる役割を果たし、エンジン始動のタイミングを判断するための重要な情報を提供していた。

図6-1:グロープラグパイロットインジケータ

図6-1:グロープラグパイロットインジケータ

現在のディーゼル車では、グロープラグパイロットは図6-1のマーク形式でのLEDランプ表示でメーターパネル内にあるのが一般的で、より長寿命で消費電力も少ない。

このグロープラグパイロットインジケータは、運転席メータパネル内に警告灯の一つとして設置してあり、グロープラグの赤熱状態を示すために使用される。

キースイッチをONにすると、グロープラグリレーが作動し、グロープラグパイロットがしばらくの間点灯する。(時間はエンジンの状態によるが、2~3秒程度)エンジン内グロープラグによる予熱が完了すると、グロープラグパイロットは消灯する。

このタイミングでエンジンキーをひねると、スタータが作動し、エンジンが始動するようになっている。

現在の車両では、この過程を一体化しており、エンジンボタンを押すだけで、グロープラグの予熱とスタータの作動が自動的に行われるようになっている。

グロープラグリレー
図7:グロープラグリレー

図7:グロープラグリレー

図7よりグロープラグリレーは、予熱用リレー、始動用リレーの2つの独立したリレーが1つのケース内に収められていて、それぞれキースイッチの操作によって作動する。

グロープラグの両端に加わる電圧が予熱時のスタータの使用時に変化することなく、グロープラグが適切な温度に達するように制御されている。

図8:通常型グロープラグ式予熱装置回路

図8:通常型グロープラグ式予熱装置回路

図8より、通常型グロープラグ式予熱装置の作動を説明する。

  1. キースイッチを「START」の位置に操作すると、バッテリからの電流がグロープラグリレーのg端子からE端子へと流れ、リレーが作動して接点P1が閉じて、グロープラグパイロットを介してグロープラグに電流が流れ、予熱が開始される。
  2. グロープラグパイロットの赤熱により、グロープラグの加熱状態を確認した後、キースイッチを「START」から始動の位置(キースイッチをSTARTからひねる)に切り替えると、グロープラグリレーのg-E端子間の電圧は無くなり、接点P1が開くと同時に、ST端子からE端子へと電流が流れて、接点P2が閉じる。
  3. 接点P2が閉じると、グロープラグへの電流は、グロープラグパイロットを通ることなくバッテリから直接流れるようになる。これと同時に、スタータの作動は始まっているが、グロープラグの赤熱状態は維持される。

エンジンの始動完了後、キースイッチを「OFF」の位置に戻すと、スタータ及びグロープラグへの電流は遮断され、作動は終了する。

自己温度制御型グロープラグ式予熱装置

図9:自己温度制御型グロープラグ

メタル式
図9-1:自己温度制御型グロープラグ(メタル式)

図9-2:自己温度制御型グロープラグ(メタル式)

図9-1に示すメタル式自己温度制御型グロープラグは、外側を保護金属管で覆い、その内側にヒートコイルとなるラッシュコイルと温度上昇に伴って抵抗値が大きくなり電流量を抑えるブレーキコイルを直列に接続することで、グロープラグ自体に自己温度制御機能を持たせて規定の温度を維持する仕組みになっている。

ラッシュコイルとブレーキコイルを直列に接続する

ラッシュコイルとブレーキコイルを直列接続することで、以下のような仕組みが実現される。

    • ラッシュコイル

ラッシュコイルは、温度が上昇するにつれて抵抗値が増加する特性を持っている。

    • ブレーキコイル

ブレーキコイルは、電流量を制御する役割を持ち、温度上昇に伴う電流の変化を緩やかにすることで、システム全体の安定性を向上させる。

    • 直列接続の効果

ブレーキコイルとラッシュコイルを直列に接続することで、以下のような動作が実現される。

  1. 初期状態では、ラッシュコイルが電流を流し、急速に発熱を開始する。
  2. 温度が上昇すると、ラッシュコイルの抵抗値が増加し、電流量が減少する。
  3. ブレーキコイルが電流の変化を緩和し、過渡的な電流変動を抑制する。
  4. この結果、システム全体の温度が規定値を維持し、過熱を防ぎつつ安定した動作を実現する。

 

初期状態では、ヒートコイルが電流を流して急速に発熱sする。温度が上昇すると、ラッシュコイルの抵抗値が増加し、電流量が減少する。

この結果、グロープラグの温度が規定値を維持し、過熱を防ぐことができる。

この仕組みにより、自己温度制御型グロープラグは効率的かつ安全な動作を実現する。

セラミック式
図9-2:自己温度制御型グロープラグ(セラミック式)

図9-2:自己温度制御型グロープラグ(セラミック式)

図9-2より、セラミックス式自己温度制御式グロープラグは、発熱部が発熱体(導電性セラミックス)と絶縁体(絶縁体セラミックス)で構成されている。

温度上昇に伴って抵抗値が大きくなり電流量を抑える特性のあるコントロールコイルを直列に接続することで、グロープラグ自体に自己温度制御機能を持たせて規定の温度を維持する仕組みになっている。

以下、図10において、自己温度制御型グロープラグ式予熱回路の作動について説明する。

図10:自己温度制御型グロープラグ式予熱装置の予熱回路

図10:自己温度制御型グロープラグ式予熱装置の予熱回路

以下、図10において、自己温度制御型グロープラグ式予熱回路の作動について説明する。

  1. キースイッチをONの位置にすると、インジケータランプが点灯しECUへの通電が行われる。ECUは水温センサからの入力信号により予熱水温の範囲にあるかを判断し、予熱水温にあるときはグロープラグリレーに通電し、グロープラグリレーをONにする。これにより、バッテリからの電流はグロープラグに流れて予熱を開始する。
  2. ECUは予熱水温に見合った時間だけグローランプリレーに通電を続けて予熱を行う。始動可能状態になると、インジケータランプが消灯して、運転者に通知する。
  3. この状態で、キースイッチをSTARTにすると、スタータによってエンジンが始動して、エンジンが回転し始めるので、グロープラグで暖められた空気が圧縮されることで圧縮熱が高くなり、エンジンの始動が容易になる。
  4. 始動後はECUにより引き続き冷却水温度に応じて、一定時間グロープラグリレーをONにしてグロープラグに電流を流すので、グロープラグの温度が規定値に保持され始動後のエンジンは円滑に回転する。

参考文献・引用元

この記事は以下の書籍等を参考、引用して作成させていただきました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です