ホンダ・バモス タイミングベルト交換

ホンダ・バモス タイミングベルト交換

ホンダ・バモス(平成17年式 型式:ABA-HM1 エンジン型式:E07Z )のタイミングベルト交換です。手順としては以下の通りです。

  1. エンジン冷却水(LLC)を抜く
  2. タペットカバーを取り外す
  3. エンジンマウント・タイミングベルトカバーを取り外す
  4. タイミングベルトを取り外す
  5. ウォーターポンプを交換する
  6. タイミングベルトの取り付けとベルトの張り調整
  7. エンジン始動
  8. 冷却水のエア抜き
  9. 試運転




エンジン冷却水(LLC)を抜く

クルマをリフトアップして冷却水を抜きます。ラジエーター下部のドレンコックと、エンジン側のサーモスタットハウジングにドレンボルトがあるので、それを2つとも緩めます。ラジエータからだけだと、冷却水はきれいに抜けてきません。それから、走行距離が10万キロなどで定期交換として交換する際は、同時にサーモスタットの交換もおすすめします。

写真では確認できませんが、サーモスタットがセットされているハウジングの外側に12mmのドレンボルトがあります。ドレンボルトの銅パッキンは原則として交換です。

タペットカバーを取り外してエンジンマウントを取り外す

バモスのエンジンの場合は、先にタペットカバー取り外さないとタイミングベルトカバーが外れない構造になっているので、これを外します。このタペットカバーについているパッキンやプラグシール、シールワッシャーなども取り替えの際に交換するようにします。

写真手前のエンジンオイルレベルゲージを外した方が、作業がやりやすいです。

茶色の部分がエンジンマウント・ブラケット

エンジンマウントとブラケットを外さないと作業ができません。自分の場合は、車体をリフトアップした状態で、エンジン・オイルパン部分に車載ジャッキに当て物をしてエンジン単体を支えた状態でマウントとブラケットを外しました。また、このブラケットにはTDCセンサーが付いているので、センサーが破損しないように注意しながらボルト類を緩めて取り外します。タイミングベルト側のエンジンマウントを取り外して、エンジン本体の片側をジャッキで支えている状態になるのですが、このことである程度エンジン本体をジャッキによって上下させることができるので、作業がやりやすくなります。但し、あくまで車体はリフトアップされている状態なので、安全には特に慎重に気をつけるようにします。

バモス分解図001

タイミングベルトを取り外す

最初に、オルタネータベルトとエアコンベルトを取り外します。次にクランクシャフトプーリーボルトを緩めます。今回は写真のように専用の工具とスピンナーハンドルを用いて緩めるのですが、このボルトは非常に固く締まっていて、簡単には緩みません。緩まないから安易にインパクトレンチを使おうと考えるのですが、別にそれでも構いません。しかし、それでも緩まない場合は、やはり人力で緩めることになります。高トルクの緩め方は自分なりに工夫をして、工具類をうまいこと使いこなすしかありません。ちなみにエンジンは左回転ですが、クランクプーリーボルトは右ネジになっています。

クランクプーリーを緩めて、タイミングベルトとご対面したらベルトの状態や、合いマークがきちんと合っているかクランクシャフトを回転させて確認します。今回の作業ではなんと、タイミングベルトの外側が削れていたので、原因を突き止めると、タイミングベルトカバーのクランクシャフト・スプロケットに近い部分が内側にわずかにへこんでいました。この部分にタイミングベルトが干渉していたものと思われます。この状態で普通に走行していたのだから逆に怖いです、タイミングベルトが格納されているテンショナーやフロントカバー部分に削れたクズが散乱していました。このクルマを手に入れてからタイミングベルトを整備したことがなかったので、今回の整備作業で運良く救われた思いです。

合いマークを合わせてから取り外す

クランクシャフトプーリーを借り締めしてクランクシャフトシャフトを左回転させながら、クランクシャフト・スプロケットの合いマークと、カムシャフト・スプロケットの合いマークを合わせて、エンジンの第一シリンダーを圧縮上死点の位置に合わせます。この位置からさらにクランクを左に2回転させてクランクの合いマークが一致したときにカムシャフト・スプロケットの合いマークが合えばOKです。

クランク側の合いマーク。スプロケットの三角マークとフロントカバーに刻印されている矢印マークを合わせる。

カムシャフト側の合いマーク。スプロケットの「up」刻印をヘッド面に対して上部に位置させたときTDCマークがヘット面に対して水平に位置していること。(下図参照)

 

エンジンルームにおける。クランクシャフト合いマークの確認方法です。

点検窓の位置は、エンジン本体とトランスミッションの連結部分。エンジン番号が刻印されている位置の近くに確認することができます。

 

クランクシャフトプーリーを借り締めする代わりに、口径が大きめのナットをクランクプーリーボルトとの間にかまして借り締めする方法がありますが、この方が作業は格段にやりやすいです。ただし、クランクプーリーボルトのみを直接借り締めするのだけは絶対にやめて下さい。仮締めと言ってもエンジンを左回転させるので、結局緩んでしまうので意味が無いということと、このエンジンでなくても、クランクプーリーボルトを直接取り付けるということは、右回転のエンジンの場合、右回転させればさせるほどクランクシャフトのネジ部を締め込むことになり、最悪の場合高い確率でネジを損傷してしまうということです。なので、ボルトを付けるときには必ず中間にクランクシャフトのねじ部口径よりも大きなナット類(何でもよい)を掛けて、左右に回転させても緩まない程度に借り締めして下さい。

以上ができたら、テンショナーの固定ボルトを緩めて、テンショナー本体を上部に押し上げてタイミングベルトを取り外します。

ウォーターポンプの交換

ウォーターポンプは10mmボルトで4カ所で留められています。またパッキンは新品に付属しています。形状を合わせて同じであることを確認したら、パッキンを取り替える前に、オイルストーンでウォーターポンプのエンジン当たり面を軽く磨いてから、パッキンを取り付けそのまま装着します。

タイミングベルトの取り付けと張り調整

タイミングベルトのテンショナー・アイドラー・カムシャフトオイルシールとクランクオイルシールを交換したら、再びカムとクランクの合いマークが正しい位置にあるかどうか確認して、ベルトを取り付けます。取り付け手順は以下の通りです。

ベルトの張り側と緩み側について

機械工学的な話になりますが、例えば上図においてプーリーAがドライブプーリー(回す側)プーリーBがドリブンプーリー(回される側)の場合ベルトが回転しているとこに発生するベルトの緩み側は上図のような位置関係になります。何が言いたいかというと、ベルトに適切な張り(テンション)を掛けるときはこの緩み側に掛けた方がベルトの伝達効率を最大限に発揮できるということです。なので、今回のタイミングベルトテンショナーの位置もこの緩み側にセットされています。

バモスのタイミングベルトの張り調整は、まず最初にタイミングベルトを合いマークをあわせた状態でセットした後、テンショナーボルトを一度緩めて作動させ、そこで借り締めした後、タイミングベルトをエンジンの回転方向(左回転)にカムシャフト・スプロケットの合いマークの位置からタイミングベルトのコマ数で5コマ進めた位置まで回転させて止め、その状態で再びテンショナーボルトを緩めると整備書には記載されています。このときテンショナー本体を作動させると、回転前よりもほんの少しベルトを張る方向に動くはずです。つまり、5個コマ進めた状態の時が、ベルトの緩み側が最も緩んでいる状態にあるということです。

カムシャフト・スプロケットの位置を回転方向に5個コマ進めた状態というのは、シリンダヘッドを外した方なら分かると思いますが、カムシャフトの位置ががエンジンの全てのバルブを動作させていない状態(全てのバルブが閉じている状態)にあるということで、このとき、カムシャフト・スプロケットにかかる動力負荷が最小であるということになります。このときに当然ベルトは緩むので、このポイントでテンショナーを最大限に掛けて、タイミングベルトに適切な張りを与えているということです。

適切な張りを掛けることでクランクとカムの動力伝達を最も適正にし、なおかつ緩みを防ぐことでベルトのコマ飛びを防いでいます。一般的な自動車のタイミングベルトがだいたい10万kmで交換指定されているのは、ベルトが劣化によって伸びることにより、テンショナーが効かなくなり、コマ飛びを起こす可能性が高いことが交換指定の理由のひとつであると考えられます。

タイミングベルトの張り調整

先のことを踏まえて、以下に示すタイミングベルトの張り調整を参考にすると、納得がいくのではないでしょうか。(以下整備書より引用)

以上でタイミングベルトの張り調整ができたら、クランクを合いマークから2回転させたとき、圧縮を感じながらなんの引っかかりもなくスムーズに回転する(バルブの干渉がない)ということと、カムスプロケットとクランクシャフト・スプロケットの合いマークが正しく合っていればOKです。後は各ボルト類がきちんと締まっているか、各パーツが適切な位置で取り付けられているかを確認して、元通りに組み立てていきます。
バモス分解図001

クランクプーリの取り付け

クランクプーリーは適切なトルクで締め付けます。インパクトレンチは使用せず必ずトルクレンチを使用してください。

  • クランクプーリーボルト締付トルク 113Nm(11.5kgf・m)
エンジンを始動してエア抜きをはじめる

ここまでできたら、全てを元通りに組み上げて、エンジンオイルと冷却水を点検してエンジンを始動させます。エンジンOHなど大がかりな整備を行った場合や、長い間クルマを放置していた場合にエンジンを再始動する場合には、ヒューズボックスのエンジンECUヒューズを抜いた状態でクランキングさせます。すると燃料はカットされ、火花は飛ばない状態でクランクが回転してオイルポンプが作動します。これを運転席メータ内のOILランプが消えるまでクランキングして下さい。

OILランプが消えたら、再びECUヒューズをセットしてエンジンを始動させます。エンジンがスムーズなサウンドで回転し、きちんと吹け上がっていれば成功です。そのまま、冷却水のエア抜きに入ります。

つづく。




ホンダ・バモス タイミングベルト交換” への4件のフィードバック

  1. とても参考になりました、ありがとうございました。タイミングベルト、こまがけずれてまして、加速が鈍く、こちらのブログの情報で無事タイミング合わせる事ができました。
    貴重な情報、感謝申し上げます。
    バモスホビオNA 4AT HM4

    • ありがとうございます!!お役に立ててこちらもうれしく思います。
      これからもよろしくお願いいたします。

  2. VAMOS 4WD のタイベル交換にチャレンジしようと思い
    色々なサイトを見ていましたが、大変詳しくご説明されていて参考になります。
    因みに貴殿の場合は馬で支えてのジャッキアップのようですが、
    作業をするうえで十分なスペース(高さ方向)は確保できたという理解でよろしいでしょうか。
    そこだけ不安なものですから、アドバイスいただければ幸いです。
    宜しくお願いします。

    • コメントありがとうございます。
      バモスは馬であげていますが、エンジン左側のエンジンマウントを取り外すので、エンジンのオイルパン部に分厚いゴムの板(ジャッキの皿くらいのサイズ)をかました車載ジャッキをもう一台かけてエンジンをある程度の範囲で上下させながら作業しています。普通ののジャッキでもいいのですが、小型で回転式のバモスに車載されているタイプのパンタジャッキの方が使いやすいと思います。
      あと、カムシャフトの合いマークが見にくくなるので、ミラーを使うより、スマホのカメラで撮影しながら確認した方がいいかもしれません。
      以上、ご参考までに。

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