スバル・ヴィヴィオ:エンジン異音

94年式スバル・ヴィヴィオ(型式:E-KK3、エンジン型式:EN07、ECVT)走行距離数は19,500km。

 

 

お客様からのご連絡から「エンジンからたまに音がするので見てほしい」とのこと。

このスバルのEN07型4気筒エンジンは静音性が高く、パワフルであるがウォーターポンプをタイミングベルトの背面で回転させているため、ベルトの経年劣化や多走行によりスリップ音が出やすくなる傾向がある。しかしながらお客様の話では、スリップ音ではなく、コトコトといった感じの音らしく。エンジン始動の状態で音がするときとしないときがあるらしい。

このような状態の時は、エンジンを始動させたままで、しばらく水温が上がるまで様子を見てみる。ファーストアイドルが下がりスロー状態になってくるとプラグコードが若干揺れているのが気にになった。

エンジンがスローになって安定している状態では、本来ならばプラグコードはピタッと止まっているのだが揺れている。何気なくプラグの頭に触れてみると、動いているのである。

1番から4番まであるプラグコードの内4番は手が入りにくいが、2番と3番は明らかに動くヘタに手を付けてエンジンがストップしてしまうことを避け、整備工場まで自走して持ち帰った。

このタイプのエンジンのプラグコードは、エアクリーナーボックスを取り外さないと外せない上に外れにくく、入れにくい。そのため、コードの破損に気をつけながら慎重に作業を行う必要がある。

 

スパークプラグを外してみると、なんと4本中の3本の取り付が緩んでしまっていた。それも一山や二山のレベルではなく、プラグのねじ山の四分の一ぐらいは抜けていただろう。

そのためプラグ本体の緩みによる、ガタつきで音が出ていたか、抜けかかったときに音が出ていたのかもしれない。





取り敢えず、全てのプラグを外してみるが異常は無く、意外と新しい。どこか他のところで交換したのかと思いきや、ユーザーに連絡してみると、ガソリンスタンドで「燃費向上するのと、よく走るようになるということで」と薦められて交換したらしい。その証拠としてバッテリ強化液やらATオイル交換とかのステッカーが所狭しとエンジンルームに貼られている。

おそらくプラグ交換の際に、正規の規定トルクで締めていなかったために緩んでしまっていたようだ。

スパークプラグの場合、普通のボルトと違い根元部分にアルミのワッシャがあり、それがエンジン燃焼室の圧縮漏れを防ぐためのパッキン代わりになっているため、ある程度締め込まないと、緩んでしまう可能性がある。また、締め込み過ぎは燃焼室のシリンダヘッド側のねじ山を傷めてしまうため十分な注意が必要である。

たかがスパークプラグ交換。一見簡単な作業のように見えるが、ねじ部を締めて緩めるだけの知識で簡単に交換することは出来ない。しっかりとした技術と知識をもって確実に取り組まなければならない。

今回は人為的ミスということで、技術的な裏付けもなく知識も十分でない状態で作業を行うことは大変危険であるということを証明した事例となった。

自動車は大事な人命を乗せて高速で移動する危険な道具である。整備作業をする際には、このことを大前提に常に正しい知識と技術を持って安全に行ってもらいたいものである。

 

  • 参考資料

ファーストアイドル:エンジン冷間始動後、エンジンを暖機し、走行性を確保するために始動後のエンジン回転数を高くすること、エンジン暖気により冷却水温が上昇してくると、徐々に回転数が下がり、暖気が完了(水温80℃)付近になると所定のアイドル回転に復帰する。

スロー:エンジン暖気後のアイドリング回転である。このとき、エンジンの回転数は安定しておりなおかつエンジン冷却水の温度も一定である(水温80℃付近)

スパークプラグ締付:新品のプラグを取り付ける場合は、まず手工具を手により硬くなるまで締め付けた後、そこから約三分の一回転ハンドルを用いてゆっくりと締め付ける。(注:プラグのサイズや一度外したプラグは締付トルクが異なる場合があるため。メーカーなどに問い合わせの上慎重に作業して下さい。)




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