セドリック:パワーウインドゥとブレーキブースターの関係

平成4年式日産・セドリック 型式:E-PBY32 エンジン型式:VG30DET 走行距離:75,000km

ブルブルと震える音

ユーザーの訴え:「ガソリンを入れて出発しようとDレンジにシフトしようとすると、ブルブルと震えるような音がした後、ピーと甲高い警告音がしてサイドブレーキが作動しなくなったので、仕方が無く手動式レバーでサイドブレーキを解除して警告音が鳴ったまま帰宅した。」

症状はユーザー宅でも確認できたので、車両自体はキャリアカーに積載して工場まで持ち帰った。

 

 

ハイドロリックブレーキブースター

ユーザーの言う「ブルブルと震えるような振動音」の音の出所を確認すると、この車のブレーキ装置である「ハイドロリック・ブレーキブースター(油圧式ブレーキ倍力装置)」のハイドロポンプが作動している音であった。

また、”ピーと甲高い警告音”は、ディーゼルエンジン車等で使われている負圧式マスターバックの負圧不足を警告(バキュームポンプの故障)する警告音と同じ音である。

サイドブレーキはサイドブレーキレリーズが作動せず、電気式サイドブレーキ解除装置が作動しないため、ユーザーの言うとおり手動でしか操作できない。




参考データと対策

この車両のシステムではブレーキ系統に油圧センサーが2個取り付けられていて、NO2は最高油圧と最低油圧を感知して、ポンプを作動または停止させる目的で取り付けられている。NO1はアキュームレータ(蓄圧器)内の圧力を感知し、目標最低油圧以下になったときに、ブレーキの倍力機構が効かなくなる恐れがあることを運転者に知らせるため、警告音を鳴らすスイッチとなっている。

したがってこの警告音は、NO1センサが以上に低下した油圧を感知し、警告音を発しているものと判断した。

しかし、このセンサの配線をショートさせてもオープンさせても、この警告音は消えなかった。

単純に油圧が低下しているだけならば、この作業のいずれかでセンサは油圧が上昇したと判断するのだから、警告音は停止するはずである。しかし、いずれも停止することはなかった。

 

ブレーキ系統で何らかの電気的な問題が発生しているのかもしれない。その原因を探ろうと車を移動しようとしたところ、パワーウインド(以下PW)が作動しないことに気づいた。しかも4ドア全てであったので取り敢えず修理に取りかかることにした。

 

本来の作業とは無関係(のはず)だが、点検すると運転席のPWヒューズ(運転席足下右)が切れていた。そのヒューズを交換することでPW自体は完治した。しかし、運転席のPWを上昇させる時に、PWのワイヤーがギシギシと重苦しそうに上がっていき途中で止まってしまった…。

PWの修理のために改めて車両を動かそうとすると、今度はブレーキの作動音がせず。また、電気式サイドブレーキのレリーズも作動してしていて、直っているではないか??

ハイドロリックブレーキブースターのモーター用にもヒューズ(エンジンルーム内のヒューズボックス)は取り付けられているので、確認したが切れていない。

配線図を見直すと、油圧NO1センサーの電源は、なんと運転席側のPWと共通のヒューズであることが発覚した!そこでハイドロリックブレーキブースターを点検し直すと、電気的作動状況を含め、本体及び周辺作動機器系統には全く異常が無いことが分かった。ということは原因はPWであるということだ。

ここからはPWの修理に手を付ける。点検では、上昇時に重さがのしかかり時折停止し、作動時にはミシミシとワイヤが切れそうな音がしてくる。何度か動かしていると、ついにPWは停止して動かなくなり、運転席足下のヒューズボックス内のPWヒューズを見ると切れている。PWの動作時の重さにより、モーターに過大な電流が流れて、発熱したことが原因のようだ。

そのため、運転席側のPWレギュレータを交換すると、PWは全く正常な動作となり、ハイドロリックブレーキブースターの警告音もきえた。

原因はパワーウインドウからの配線構造

結局、ユーザーから訴えのあった故障は全てPWを修理したことで完治した。ブレーキ系統のセンサ電源をPWからとっている配線構造になっているのは意外である。メーカーの配線図があれば、もっと適切で迅速な対応が出来たのかもしれないが、今回は実際に作業を行いながらでの配線構造の理解であったため、車両の適切な情報の把握をメーカー側と共有することの大切さを改めて感じた故障事例であった。


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