スカイライン・ハンドル操作時にアイドル回転乱れる

1995年式:日産スカイライン エンジン型式:RB25DET





エンジン不調で試運転

車検とエンジン不調とのことで入庫してきた。まず最初にエンジン不調のアイドリング回転不調の原因を調べるべく試運転を行う。エアフロメーターを疑いながら走行していたが、ステアリングが妙に左に取られる。タイヤの変形が原因のようだ。スカイラインと言えば、アルミホイールに標準よりも太いタイヤが装着されていることが多いのだが、幸いタイヤ溝は残っているようだ。このことはユーザーへの連絡事項の一つとして記入しようと思いながら走行を続けた。今思えば、これがこの修理の難問を解く鍵になるとは、全く考えもしなかった。

ユーザーとのやり取り

試運転では症状が出ず、時間がかかりそうであるので、車検整備から先に見積もりを取ってユーザーに作業の了解を得る。その際にエンジンのアイドリング不調について詳しい話を尋ねてみると、アイドリング不調によるエンストはないものの、走られなくても症状が出ることがあるという。エアフロメーターは1年前に交換されているが、症状はよくなっていないということであった。

前回のこの症状で入庫した際に、症状を出すために相当の距離を試運転したが、結局症状が出なかったので、推測でエアフロメータを交換して様子を見て下さいとのことだったらしい。この時点でエアフロメータが疑わしいという予想は大きく外れ、このスカイラインとは長期戦になるということを覚悟した。

R32スカイラインのRB25DET型エンジン搭載車のエンジンルーム内の構成部品配置図

基本点検の結果

基本点検結果、点火プラグは交換したが、燃圧には異常が無く、エアフロメーターの信号にも異常は見られなかった。(下表)メーカー・ディーラーの情報によれば、AACバルブ(エア制御弁)に溜まったカーボンが原因でエンジン不調になることが多いという。AACバルブを外して清掃したが、思っていた以上にキレイで、作動にも異常が無いようだった。

エアフロメーター計測数値の基準値(自分で測定した値)

原因追及に行き詰まる

原因追及に行き詰まったときには、あえて実際にその症状を出してみると分かることがある。漫然と試運転させてみても燃料を使うだけなので、慎重にポイントを絞り込むことを繰り返して試運転させてみた。それでも症状は出ない。焦りが出始めた頃、クルマをリフトに載せようとしたときにクルマの位置が若干ずれていたので、直そうとしてステアリングを切ったとき、アイドル回転が上がった。もしかしてと思いステアリングを左右に回転させるとアイドル回転が乱れるではないか。「これだ!!」——。

パワーステアリングに大きな力が必要になったときに、アイドル回転が乱れるのだ。

意外な故障の正体

タイヤの空気圧は2.0kg/cm2入っているし、ECUにもパワーステアリングの信号は正常に入力されていて問題は無い。このほかに原因になる要素を考えると、最初に点検したとき、前輪が変形ぎみだったことを思い出した。これが原因でパワーステアリングの信号が誤って入力されてしまうのではないだろうか。何のためにタイヤの空気圧を2.6kg/cm2くらいに充填すると、アイドル回転が乱れなくなった。

人間というのは面白いモノで、最初に気がついたタイヤの変形が、何回も乗っている内になんとも思わなくなっていたのだ。このクルマのユーザーも、なんとも感じなくなっているに違いない。ましてや、タイヤの変形がエンジン不調につながるとは、予想さえ出来ないだろう。

詳しく点検すると、全てのタイヤが変形ぎみだったので、すべて交換した。このときメーカー指定の空気圧は2.3kg/cm2だった。指定の空気圧は必ず守るのが前提で、クルマによっては前輪と後輪の空気圧が違っていたりする場合もある。また、空気を充填する空気あるゲージにも若干の誤差があることもあり、これによる誤った空気圧を充填してしまうことにより空気圧がずれてしまい、センサが反応してメーターパネルの警告灯が点灯することもある。タイヤの空気圧といえどもシビアな整備管理が要求されるのだ。

スカイラインクラスのタイヤも4本交換となるとかなり大きな金額となったが、無事に作業を終了して、納車となった。




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